“既存の降雨減衰確率推定法”
国内においては、旧日本電信電話公社(現日本電信電話(株))が全国の気象台で1940〜1950年代に自記記録紙に記録された雨量データから10分間毎の雨量を読み取り、それらを解析処理した成果として、1970年に、ガンマ分布をベースとした降雨減衰確率推定法、及び同推定法の基準パラメータとして用いる1分間降雨強度として全国の強雨期3ケ月(7〜9月)の累積確率0.0075%における値をとりまとめている。そして、これが今日まで主たる降雨減衰確率推定手法として、いくつかの修正が取り入れられつつ、用いられてきている。以下に関連する主な報告を示す。
@ 森田和夫,樋口伊佐夫,“降雨による電波の減衰量の推定に関する統計的研究”,研実報,Vol.19,No.1, pp.97-150,1970
A 森田和夫,樋口伊佐夫,“ミリメートル波帯降雨減衰の推定”,研実報,Vol.24,No.9,pp.2061-2071,1975
B 森田和夫,樋口伊佐夫,“準ミリ波帯降雨減衰分布についての考察”,研実報,Vol.25,No.4,pp.803-809, 1976
C 細矢良雄,佐々木収,白土正,森田和夫,“20GHz帯降雨時伝搬特性の推定”,研実報,Vol.33,No.6, pp.1221-1231,1984
D 細矢良雄,“日本各地の1分雨量分布の一推定法”,信学論(B),Vol.J71-B,No.2,pp.256-262,1988
なお、@〜Cは、@が、既存のガンマ分布をベースとする推定法に関し、用いるパラメータを用意し、必要な一連の処理を含んだ最初のコアとなる報告を行ったもので、その後A〜Cが随時、情報追加、修正等を図ったものである。Dは、ガンマ分布をベースとする推定法に関するものではないが、強雨期3ヶ月の確率と年間の確率との関係に関する新たな情報追加を行っているという点において関係している。
【ITU-Rで勧告されている推定法】
日本以外にも多くの国々で降雨減衰に関する研究は行われてきており、降雨減衰推定法及びパラメータが提案されているが、世界的に用いられるものとしては、以下のようなITU-R勧告が用意されている。このうちITU-R勧告Rec.P.838-3 は、降雨強度と降雨減衰係数(単位距離[km]当りの降雨減衰量)との関係について示したものであり、国によって用いる推定手法が異なるとしても、各手法に共通的に適用できるものである。
@ ITU-R勧告Rec.P.530-12,“Propagation data and prediction methods required for the design of terrestrial line- of-sight systems”
AITU-R勧告Rec.P.837-4,“Characteristics of precipitation for propagation modelling”
BITU-R勧告Rec.P.838-3,“Specific attenuation model for rain for use in prediction methods”
C ITU-R勧告Rec.P.1410-4,“ Propagation data and prediction methods required for the design of terrestrial broadband millimetric radio access systems operating in a frequency range of about 20-50 GHz ”
