““日本全国に適用できる年変動を考慮した新たな降雨減衰確率推定法”


− 既存の降雨減衰確率推定法は、適宜改善が図られているが、1970年代に、中継系マイクロ回線の設計用を目的として、提案されたものがベースとなり、パラメータも1940〜1950年代に気象台で自記記録紙に記録されたデータを基に用意された当時のものが使用されている。

【検討課題】
− 地球温暖化、温室効果等、近年の気象の変化により、雨の降り方に変化があるのでは。
− 近年、高い周波数帯の無線通信システムにおいても、加入者系システムに利用されるものが現れるなど、多様化してきており、多様な品質要求に適用できる推定法が必要となっている。
− 雨の降り方は年によって異るが、得られた確率分布が、雨の降り方によって満足しない年があるのか、あるとすればどのくらいの確率で満足しないのか。

【関連する近年の動き】
− 気象庁が、AMeDASシステムにより1時間降水量(最長1976年〜)及び10分間降水量(最長1994年〜)を、また、地上気象観測システムにより1分間降水量(最長1996年〜)をディジタル情報で得るようになり、それらが数値データで利用可能となっている。
− 細矢(元NTT通研/現北見工業大学教授)が、広い確率範囲において実分布に対する近似が優れているM分布を提案*1 ((参考論文A) 1988年)。細矢等は、さらに、M分布を用いる場合に有効な、複数の超越方程式の解を得る近似式を提示*2((参考論文B) 2004年)。
− 唐沢及び松戸(元KDD研)が、降雨の年変動を考慮するために有効な、安全係数の概念を提案(1988年)。

【研究成果】
@: 気象庁1分間降水量データから1分間降雨強度累積確率分布(CDF)を精度良く得る手法を提案(論文1)
A: M分布が実分布に対し広い確率範囲において優れた近似を示すことを確認(論文2)
B: 空間相関特性が降雨強度のn乗に依存する[nは降雨減衰係数(単位距離[km]当りの降雨減衰量/ITU-R勧告Rec.P.838-3)の周波数に依存する係数]等を確認(論文3)
C: 1時間及び10分間降水量データから1分間降雨強度累積分布(CDF)を得るために使用する、M分布を用いた異積分時間降雨強度確率分布の高精度変換法を提案(論文4)
D: A〜Cの成果を反映するとともに、安全係数の概念を導入した、日本全国に適用できるM分布を用いた新たな降雨減衰確率推定法を提案(論文5)